No.1 輸入原材料、中国製原材料の使用について
患者さんから、原料の原産国や検査体制について聞かれることがあるのですが、以下2点について教えてください。
①輸入原材料についての異物や不純物についての検査の有無について(先発品、後発品共通)。
②中国製原材料の使用について(先発品、後発品共通)。

※過去日本ジェネリック医薬品学会事務局へ寄せられたご質問と弊会からの回答でございます。
2009/11/06(Fri) 16:04:27
質問者:事務局

  回答
①輸入原材料についての異物や不純物についての検査の有無について
医薬品の場合,原薬には不純物を規制する規格設定が義務付けられており,先発,後発品を問わず,規格に適合する原薬だけしか使用できないことになっています(医薬品の製造販売業者は試験して規格に適合することを確認しなければなりません).

日本では先発,後発品共,通常,同一の不純物規格になっていますが,先発,後発の原薬で製造工程が異なると不純物の種類,量が異なってくるため,厳密には先発と後発品の不純物の種類,量は一致しません.最近,それに関する学会報告が流行的に取り上げられ,後発品の不純物が問題視されております.

ですが,ジェネリック学会学会誌(※1)の総説にもございます通り,主要な不純物は規格で規制されていること,化学医薬品の不純物は通常,薬埋活性が原薬よりかなり低く抗原性も低いこと,それら不純物を含む後発品は既に医療の場で使用されており,臨床的問題が報告されている例は極めて少ないことから考えて,先発と異なる後発品の不純物をそれ程問題視することはないのでは,と考えています.
実際,化学医薬品で不純物によって重大な医療事故を起こしたという例はほとんどないと思います.
また,近年,承認される後発品は,先発品と同様,ICHガイドラインに従い,かなり厳しい不純物規格を要求されていますので,まず問題はないと思います.


注意しなければならない不純物は,薬埋活性,毒性,変異原性,免疫原性が強い不純物で,更に特定しにくい不純物を含む原薬を医薬品に使用する場合です.その意味で,アナフィラキシーを起こしやすい高分子の不純物を含む生物医薬品では注意が必要です.
以前,問題になったヘパリン(※2)は死亡の原因ははっきりしていませんが,不純物によって引き起こされた一つの典型的な事故例と思います.
しかし,後発品に生物医薬品は少ないので,問題が起こる可能性は少ないと思います.


②中国製原材料の使用について
原薬は,先発,後発を問わず,いろいろな国から輸入され,使用されています.ですが,上述しましたように,規格に適合した原薬しか使用できませんので,臨床的に問題は起こる可能性は少ない筈です.
原料をどの国から仕入れようと自由ですが,医薬品の製造販売業者は,原薬,製剤の品質管理に責任があり,仮に規格不適合な原薬を使用した場合,薬事法違反になるため,変な原薬は使用しません.

しかし,ヘパリンのような生物医薬品は不純物の全てが明らかにされている訳でなく,また,余計な不純物が混入する危険性があるため,ヘパリンを製造する工程を厳密に管理していないと,規格にはない思わぬ不純物が混入してしまうことがあります.
製造工程はFDAの査察を受けますが,無数の医薬品の全ての製造工程をくまなく査察することは不可能に近く,製造販売業者が原薬メーカーを厳しくチェックすることが重要となります.それでも見落としがないとはいえず,今回のヘパリンの事故(※2)はバクスターという大きな会社でも,このような事故は起こりうることを示したものだと思います.


以上,ヘパリンが医療関係者に衝撃を与えたのは事実ですが,少なくとも化学医薬品の不純物について,医療事故が起こる心配はほとんどないと思います.


※1:「ジェネリック研究 第1巻第2号」 正会員様、賛助会員様はweb上で本紙をご覧いただけます。
※2:2008年、血液病治療最大手の米バクスター・インターナショナルが米国で販売した血液凝固阻止剤「ヘパリン」を使用した患者に重い副作用が見られた問題
2009/11/06(Fri) 16:05:30
回答者:事務局